ゆうくれない

何かを観た感想だったり諸々書き連ねた何か

劇団チョコレートケーキ「帰還不能点」感想

フォロワーさんが「劇団チョコレートケーキいいよ!!」と呟いていらっしゃったのでじゃあ観に行くか〜!と観に行きました。

あらすじも面白そうな内容だったので。

↓あらすじ

「1950年代、敗戦前の若手エリート官僚が久しぶりに集い久闊を叙す。やがて酒が進むうちに話は二人の故人に収斂する。 一人は首相近衛文麿。近衛を知る参加者が近衛を演じ、近衛の最大の失策、日中戦争長期化の経緯が語られる。 もう一人は外相松岡洋右。また別の一人が松岡を演じ、アメリカの警戒レベルを引き上げた三国同盟締結の経緯が語られる。

更に語られる「帰還不能点」南部仏印進駐。

大日本帝国を破滅させた文官たちの物語。」

東京芸術劇場公演紹介ページより(https://www.geigeki.jp/performance/theater263/)

 

場所は居酒屋で、当時の模擬演習(?)の様子だったり当時の首相だったりを劇中劇で演じる形式。

なので場面転換は無く、照明の切り替えと居酒屋の机椅子を動かすのみ。

言ってしまえば、昔の知り合いたちが集まって居酒屋でワイワイ昔話をするだけ。

なんですが!!それがとても面白い!!

あとは照明を黄色っぽいのだったりちょっと変わった色だったりするんですが、割と素直な使い方をしています。まああんだけ上手い構成と上手い役者だったら味付けはタレより塩でしょ!!ってなるのはとてもわかる。

 

お酒が入ってふざけて当時の首相のモノマネをしだしてそこから当時の再現劇中劇に入ったりして入り方がとてもスムーズニュートラル。

間が悪かったり上手くないとあれ一気につまらなくなるんだろうなあ。

あと劇中劇の小道具は全て居酒屋の物品なので、他国の重要な書類も「おしぼり」というとてもシュールなもの。

あと宣誓書かなんかがおしながきだったり。

なんだか滑稽なんですが笑えないんですよね。

 

当時のまま国で働いてる人、民間に行った人、色々な立場や考え方になって当時振り返ります。

確か冒頭の模擬演習(?)は南仏侵攻を遅らせるにとどめる結果だったような。若手有望株が集められ、各々もその立場が分かっている。

若手なので権力も発言権も発言力も無いのは普通にわかるし、ヘマしなければ良い立場に行けることも各々わかっていたはずです。なので日米戦争になれば確実に負けるという試算が出ても上層部に強く言えず(言う必要もなく)そのまま終わり、今となってはただ上層部の愚痴大会になるわけです。

 

そのなかでも、あの時なにかできたのではと考えていた人もぽろぽろ出てきます。

ただあくまで彼らの結論としては「どうしようもなかった」に留まってしまいます。でもそこで訴えかけるシーンは迫力ものです。

 

最後は各々当時の模擬の役割を演じ直し、帰還不能点の回避を総動員で行う希望ある終わり方でした。

ここの照明がだんだん黄色から白に変えていって、希望の光のようになっていくのがとても良かったです。演技の盛り上がりと相まってとてもよかった。照明に泣かされたようなもんです。

 

あと余談で劇冒頭が当時の模擬演習風景で始まるんですが、中央でひたすら扇子扇いでる神経質そうな男いるななんだろうと思ってて、いざ終戦後の居酒屋のシーンになったらあの時にいなかったような丸眼鏡のへろっとした男いるだれあれ…?ってなってたら実は冒頭の超神経質な男だったという。

いやいや変わりすぎでしょう…何があったんだ何が…当時はキレッキレの参謀とかにいそうな感じだったのに…彼も彼で当時の話になると辛そうな顔をしていたので、色々思うところがあったんだろうなあと。端々で色々あったようなことを言っていましたが、あの豹変ぶりは察するに余りある。