ゆうくれない

何かを観た感想だったり諸々書き連ねた何か

脳内で舞台上演するっきゃない 戯曲集 三島由紀夫「近代能楽集」

ありとあらゆる公演が中止になった悲しみをいつまでも引きずっててもしょうがないので、戯曲読んで脳内で公演するっきゃないな!と思い立って昔読んだ戯曲集(?)を掘り起こしてきました。

 

この本、8作品くらい収録されているのでさくっと読めます。あと能を基にしてるのでそれと相関や差異を比較するとより面白くなるのかなと思います!!

 

私は三島由紀夫も能も詳しくないのでこの本だけの感想、というかこういう内容で舞台やってほしいなーという妄想を書き連ねます。この遊び(?)楽しい。オススメです(難易度がそれなりに高い)

 

なんだっけ何かの演劇賞の講評に「近年音のリズムが重視され、セリフそのものを軽視する傾向がある」みたいなのが書かれててそうなのかーと思いつつもそういうリズム重視好きなんだけど(柿とかそうだと思う)まあでも三島由紀夫読んでるとセリフそのものを楽しみたい欲もありますね。

 

三島由紀夫「近代能楽集」全体的に湿度高め(のように感じるし私がそういうのが好みなだけかもしれない)
BGMは基本無しがいいなあ。無音が良い。

雰囲気としては時々ねっとりときどきさらっとしたセリフ回しでいってほしい。

全体的に昭和な雰囲気で・・・変に現代チックにしなくていい。

 

内容として、班女と卒塔婆小町について妄想が捗ったので書きます。(ほとんど班女)

ちなみにAmazonだと品切れなので楽天などで買うのをお勧めします。

電子書籍は・・・見つけられなかったんですけどどっかにあるのかな・・・

 

班女

男(吉雄)と扇を交換し、その男をずっと待っている女(花子)とそれを住まわせている女(実子)の3人が登場人物

花子は毎日駅で扇を持って吉雄が来るのを待っている。しかしそのことが新聞に載ってしまう。一緒に住んでいる実子は異常なまでに花子に執着し、花子のことが新聞に載ったのをきかっけに旅に出ようという(吉雄に合わせないため)

そして吉雄が花子のもとに会いに来るが、花子は吉雄ではないと言う。というストーリー。

 

花子にとっては吉雄を待つという行為が目的になっているというか、いつか吉雄が帰ってくるという希望のために生きている気がする。だから本物の吉雄は必要がなくなってしまった。という感じかな?と。

この現実が妄想というか架空の存在と替わってしまう作品が好きでして。

花子は現実を否定することでいつまでも吉雄を待ち続ける世界にいられる訳です。

待つというのはある意味希望がある行為とも捉えることも出来て、来る相手がいるので待つことが出来るし、いつかやってくるという希望をいつまでも持っていればその希望はいつまでもあり続けるわけです

(それが続けられないから大多数は現実に目を向けざる負えないんですが。)

 

ですが探すでもなく「待つ」という行為は当たり前ですが先にも後にも進みません。

あくまで受け身な行動なので停滞の一択なんですね。

 

あと大分昔に読んで記憶があいまいなんですが、別役実の「やってきたゴドー」かサミュエル・ケベットの「ゴドーを待ちながら」の方だったかにこの行為についてあったようななかったような。

「待つ」という話を聞くとこれらの作品が思い浮かびます。なんとなくですが。

 

内容に戻りますが、第一場が実子の独白だけなの鬼畜だと思います。でもこのシーンのやり方次第で実子の花子への執着が分かる気がします。面白いなーこの独白でおそらくこの後のシーンのすべてが決まるんだろうなー。プレッシャー半端ないですね!!

プレッシャーの前にこの長台詞受け持つの怖い!!

 

そして「…そうして追い詰められたら、(笑う)死ねばいいのよ。そうなんだわ。それでいいんだわ。」で第二場に移るんですが、いやあここのセリフ需要ですよ。腕の見せ所!!間と表情でぞわっとさせて欲しい。なんだろうな実子の覚悟と狂気を観せてほしい。

実子は花子が必要なんだけど、吉雄と会ってしまったら自分の手元から離れてしまうだろうと思っているので、どうしても会わせたくない。

でも花子のことを思えば吉雄に会わせるのが花子の幸せなんですけどね。

いやーーーーこれがあまりにも美しくて残酷です。

大切な人の一番の幸せ(実は花子は会うことではなく待つことが幸せになっているが)

花子の幸せをもたらせないというこの人間臭さで片づけてしまうにはあまりにも惜しい。

でも多分実子はその待ち続けている花子を美しく思っているんでしょうね。

 

実子はねっとりとしていて精気がありそう

(ただあまりうるさくしないでほしい)

精気というか花子への執着で生きてる感じがいい。

片や花子は横顔ばかりがイメージに出てくる。ト書きも「(きいていない)」ってあるからそれかもしれないですが、横顔が綺麗なイメージ。肌が白くて生気が感じられない感じがいいなあ。現実を拒否しているのでそういう雰囲気で。

 

第五場は花子が実子の側にいるというか、実子の膝とかに花子の頭をもたれてたり、とにかくどこか身体が触れているのにお互いの目線は混じり合わない体勢なイメージ。

というか終始2人の目線はあまり合わない方向がいいなあ。求めているものが違っている者同士の目線は混じって欲しくない。

 

吉雄のイメージが全然わかないんでどうしようかなという感じです。

実子の存在が強すぎるので・・・。というかこの舞台で感情的になるの実子くらいなんだろうから余計かもしれない。

 

 

卒塔婆小町

これ!!難しい!!私の好みでいってしまえば詩人が少尉の生まれ変わり的な感じでファンタジーな感じでもいける気がするんだけど、ちゃんと読み込めばそんなことはないってなりそう。ラストも詩人の死体が運ばれて老婆が残される侘しい感じだしなあ。

でも少尉の「百年経てばまた会える気がする」ってあるし・・・夢みてもいいじゃない。

ただ、能だと男が少尉の幽霊に取り憑かれて死ぬみたいなのでそこんとこどうなんだろうか。

 

詩人はアンニュイな雰囲気の人でお願いしたい。若いのに死相がみえるのか・・・。誰がいいんだろうか・・・。

全体的に雰囲気を楽しんでください風にやればどっちともとれるのか(姑息な手口)

 

という戯曲と私の好みの葛藤書いただけでした!!