無料公開されていたので改めて観てみました劇団柿喰う客「美少年」
初めて生で観た柿喰う客の作品で割と好きだったのでどうせだしちょこっと感想まとめとくかと書いてみます。おもっくそネタバレしています。
この劇団結構言葉の雰囲気というか狂言回しっぽい言葉遣いをハイスピードでぶっ飛ばしていくので、文字に書き起こすと面白み半減してしまうため、気になる方はぜひ動画をご覧ください。
ちなみにこの劇団がこのあとやった舞台「御披楽喜」は劇中にでてくるじゃのめ先生が出てきて今回の話とちょっとつながっているのでこっち観とくと面白いかもしれないです。
(あと全体的に美大生に怒られそうな内容だったけど、中屋敷さんは美大生に何か恨みでもあるんだろうかとか考えてました。)
この舞台、つくりとしては冒頭の
「そう美少年の獲得に失敗した我々はすでに美少年を演じるのを完全に放棄し・・・この物語を遠巻きに遠回りに演じながら予定時間の60分が過ぎ去るの
をただただただただただ待ち続けるのであった」
にあるように美少年をとりまいていた人々のストーリーが主で進んでいく(後半に美少年役としてでてくるけど)
でもまあ中心人物をあえて出さない手法は結構見る話だし、周りのリアクションから観客の各々が思う美少年像ができてくるので、下手に美少年として誰か出すよりも効果的な気がする。
以下なんとなく音の感じとかセリフ回しとかが好き集
「国語教育の限界ね国語教育の限界ね読む書く聞く話すの(略)」
「恵比寿のしがないシガーバー」6:42付近
「そうよ私は人の身の上話を聞くのが何よりも嫌いな女演劇の登場人物としてはあまりにも使い勝手の悪い登場人物」8:00付近
「そこにアートはあるのかい」
「へっデザインの音がする」30:20付近
題名にもある「美少年」であるひばりちゃんは、誘拐事件の被害者だった。
昭和最後の事件で、その犯人はいまだに不明であり、月日が経ち劇中の現在平成30年。
当時のひばりちゃんの話や、現在の時間軸で同窓会長が今のひばりちゃんの居場所を突き止めようとして、過去の事件の本末、そして現在のじゃのめ先生行方不明事件の犯人も判明する。
じゃのめ先生の話は長くなるので、担任とひばりの話について書きます。
この舞台、登場人物結構でてくるが、4人で兼ね役しながらやっている。
同じ役者がシーンによっては違う役を演じるが、特に衣装や化粧を変えるわけではないので、割と役者のビジュアルがそのまま投影される形だ。
舞台の冒頭にひばりパパと当時の担任が出てくる。
後々話が進んでいくとわかるのだが、現在の美少年ではなくなったひばりは、ひばりパパとして気がくるってしまった当時の担任と過ごしている。ただし、担任はいまだに昭和に起きたひばりちゃん誘拐事件の真っただ中にいて、ひばりちゃんの帰りを待っている。
ひばりは美少年として崇拝している元担任をそばに置くことで美少年だった特権というか、人生で輝いていた瞬間に溺れていた。
ちなみに、ひばりパパは後々でてくるひばりちゃんと同じ役者だ。
舞台をある程度見慣れている人ならこの兼ね役は納得すると思う。
基本的に父と息子が出てくるとしたら同じ役者が両方演じることが多い。
だからそういうもんだと思うじゃん冒頭。それが普通だと思うじゃん冒頭。
現代の時間軸でもひばりが「ひばりパパ」として、当時の担任は担任のままとして生きてるだなんてつゆほども思わないわけですよ。この兼ね役が当たり前(?)なので。
これが判明したとき、素直にやられたなーと思った。
演劇のメタい部分、役者が兼ね役をしているという現象をそのまま使っているトリックだったからだ。
演劇観慣れた人ほどあのやられた感があるんじゃないかと思う。
そして、現在と昔が行ったり来たりするので、いまいち「ひばりパパ」がそのまま昔の「ひばりパパ」なのか、現在のひばりが演じている「ひばりパパ」なのか」いまいちわからない。
冒頭のシーンはどっちなのかいまいちわからないので置いときます。
ただ、11:42あたりの先生とお父さんのシーンは多分現在なんだろうな
「チャイムは鳴ってませんよ落ち着いて」のセリフが浮いているのでなんとなく違和感があったが、おそらくあそこは現在の時間軸なんだろうな。
チャイムが鳴って、
ひばりちゃんが帰ってくる(過去)と、
同窓会長がひばりと元担任のいる部屋に乱入する(現在)
の2つに次元が枝分かれするのでまあうまく作ったもんだなと。
ネタバラシの後のスピードマッハの伏線回収は割と気持ちが良いし、
最後に展覧会のシーンで裁判沙汰になる美大生お前もおったんかーとか小ネタ(?)もある。
前半は割とふざけてるシーンもあるけど、後半から一気にシリアスシーンに突入する温度差よ。
スピード感のあるセリフ回しの劇団のジェットコースターのようなテンションの上がり下がりを体験してみてください。